もう11月とか勘弁して欲しいですね。ケンタッキーのクリスマス・バレルのチラシが入っていたりして、「ちょっと前まで暑かったのにどういうこっちゃ?」と思うばかり…
「火事ライオン」の歌を、その歌の舞台になっている場所で聴くと、歌詞内容を幻視できる(こともある)。歌われている場所(聖地)で出会った人達のちょっと心温まる青春、交流の話。
このアイディアの独特さにおもしろく思いつつ、同時にどこへ行くのか戸惑ったりもしましたが、途中からそれがうまく活かされているような気もして、いい作品に出会ったなと思いながら読み終えました。
誰もが知っているわけではなくてもおもしろい作品はあるし、そういう作品を探して来て紹介している人もすごいです。
今月の目玉はこれかなという感じ。
妻を事故で亡くした男と、その発達障害(かな)の息子の話。息子は時々暴れたりして、普通(と言ってはよくないかもしれないけど)の生活は送れない。が、脳科学に基づく技術により、MRIで亡くなった母親の脳活動を追体験するようなプログラムを受けるうちに落ち着き始め、隠れていた知能も示すようになる。
多くの人が「アルジャーノンじゃん」と思うでしょうね。でも、「アルジャーノン」がどうだったか覚えていませんが、ラストはだいぶ違うかも。 話としては似ていますが、後で述べる理由からも、私はこちらの「惑う星」の方が好きでした。別に比べるつもりもないですけど。
他の惑星に生物の痕跡を探す科学者の父シーオとその息子ロビンが、空想の中で他の惑星を訪問する場面が何度も出て来ます。また、2人でキャンプするシーンも何度か。それらの描写が詩的です。
シーオは、というか宇宙を研究する科学者の中には、少なからずカール・セーガンのような人がいるのかも。
また、トランプのような人が大統領(明らかにトランプを意識して書いていると思う)になったことから、悲劇の引き金は引かれます。 基礎科学がなおざりにされて様々な科学プログラムが中止に追い込まれ、科学自体もなおざりにされるという状況が、今の日本やトランプが再選されたこれからのアメリカを思わせて、悲しい。
そして何よりもこの本が記憶に残る一冊となったのは、自分と息子のことを連想させられたからでもあります。息子はたぶん近年言われるようになった「グレーゾーン」のような気がしています。で、不登校になりつつあります。
シーオに比べれば随分楽なんですが、それでも、シーオが研究ができないと苦しむところ、もう休みを取れないと悩むところ、息子に愛情を感じるが故に戸惑い、怒り、悩みむところなんかは他人事とは思えませんでした。涙を浮かべずには読めなかった。
抗争に負けてアジアへ、やがて日本へ来て再起を図るメキシコ麻薬カルテルの幹部、堕落した外科医、人並み外れた膂力を持つ親のない少年などが交差する犯罪小説…なのですが、アステカの神話が絡んでいて、本の表紙のように、異様な迫力があります。