ぱらりーそーしー日記

タイトルに特に意味はありません。子どもの造語がかわいかったので、タイトルに使いました。本、子育て、映画、旅行等。たまにしか投稿しませんが…

2024年7月に読んだ本から

7月に読んだ本の中から何冊かを。

 

最終巻を読み終わりました。以前にも紹介したことがありますが、すごい作品でしたねえ。

paraly-sorcy-diary.hatenablog.com

徳川幕府の将軍が女で、大奥は男ばかりで…と男女が入れ替わって描かれるのですが、それによって現在の男女平等の問題などが炙り出されます。

といっても堅苦しい話では全くなく、エモーショナルな場面もたくさん出て来ます。
また、時代は江戸時代ですが、これは立派なSFでもありますね。と思っていましたら、第42回(2021年)の日本SF大賞を受賞していました。

未読の方はぜひ!

 

歴史からは消えてしまったけど、かつて恐竜とアリは互いの長所を生かし合って共生を始め、人間の歴史と同じように協力し合うこともあれば宗教に端を発して争うこともありつつも、文明を築き上げていた。

と(特にSFを読まない人には)荒唐無稽な話にも思えるでしょうが、そこは「三体」の劉慈欣なので、娯楽性ばっちりに読ませます。

アリ社会の描写も出て来るSFでは、エイドリアン・チャイコフスキーの「時の子供たち」もおもしろいですよ。

 

 

年始に「まだ読んだことのない作家の本を読んでみよう」と目標を立て、本猿さんのブログやお勧めを受けて、このポール・オースターの「ムーン・パレス」を読んでみました。積ん読になっていたのを、ポール・オースターの訃報をきっかけに手に取った、というのもあるでしょう。

まず、アメリカ人作家の本は自分には合うような気がしました。派手な修辞を使ったりしない、どちらかというと簡素な文章だと思うんですが、その簡素であったり平明であったりする文章から立ち上って来るものがよい、というのでしょうか。全然うまく言えませんけど。

アメリカ人作家と大きく括り過ぎてしまいましたが、アメリカ人作家にもいろんなスタイルの文章を書く人がいるでしょう。
また、私は原文を読んでるわけではないので、元の英語の文章が平明だったり簡素だったりするのかわかりません。翻訳家の方が、元の英語の雰囲気をなるべく日本語で再現してくれてるんじゃないかなと思うくらいです。

この「ムーン・パレス」は、いくらかポール・オースターの自伝的要素もあるんでしょうか。
主要な登場人物達がいずれもある意味で一度は死に、そこから生まれ変わるというところは青春小説でもあるように感じました。

自分も大学3回生の時に、失恋をきっかけに、やはりある意味で一度「死んだ」のではないかと思います。それまでの少年時代から連続して来た自分が、そこで一旦完全に否定され、それから解体されて、サナギから蝶が出て来るように新たな自分になって行ったような気がしています。「ムーン・パレス」のM.S.フォッグや若きエフィングのように。

もっとも、私は蝶なんかではなくて、せいぜい蛾というところですが…

自伝的と思ったのは、マーコ(M.S.フォッグ)が散歩の時に、街の様子を細かく描写していたからでもあります。目の見えないエフィングに説明するためではあるのですが、そうやって描写の練習をしているところが、乗代雄介の「」にもあったなと思って。作家になる人って、多かれ少なかれそういうことをするのかな、と。

「まだ読んだことのない作家の本を読んでみよう」をきっかけに、いい作品と出会えたなと思います。まずは読んでみないことには、出会いもできません。

ちなみに、もう一つの目標は「哲学の本を読む」ですが、こちらは全然読み進んでいません…哲学はおもしろいものではあるんですけど、ついSFに手を出してしまったりして、なかなか…

哲学の本は切実に必要としている時に読むものなのかもしれませんね。(言い訳がましい…)
前述の苦しい時には竹田青嗣ニーチェ入門」には随分助けられましたし。