4月に読んでよかった本は何冊かあるのですが、今回は「デューン 砂漠の救世主」のみご紹介します。
「デューン 砂漠の救世主」の新訳版が出ると早川書房のTwitterで知り、発売日に本屋へ突撃しました。
【伝説のSFシリーズ第2弾!】
— 早川書房 翻訳SFファンタジイ編集部 (@hykw_SF) 2023年4月14日
『デューン 砂漠の救世主〔新訳版〕』4/15発売です! 新訳版でぜひ読んでいただきたいところを担当編集者が紹介します。
映画『DUNE/デューン 砂の惑星』パート2も公開決定。伝説的傑作シリーズを新訳で!https://t.co/Ir9SGtsXuW
まあ、だいたい何でも発売日の翌日に店頭に並ぶ地域なので、案の定なかったのですが。
早く読みたくて気が急くので、「どうせ取り寄せを頼んでも入荷は2週間後とか言われるんだろうなあ」と思いつつもダメ元で店員さんに聞いてみたら、なんと5日後に入るとか。Amazonとかe-honとかで買うことになるかと思いましたが、この本屋で即、注文しました。
「DUNE」のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のおかげですね、「救世主」が新訳で出たのは。今年11月公開の「DUNE Part2」が当たれば、「救世主」も映画化する話もあるみたいですし。
もちろん早川書房にも足を向けて寝られません。これに続いて、「砂丘の子供たち」も出してくれるようですから。
さて、その「砂漠の救世主」は「デューン 砂の惑星」の続編です。
「砂の惑星」がダイナミックな陰謀劇、復讐劇、貴種流離譚であり、派手な戦闘シーンやサンドワーム(砂虫)もあったのに比べると、この「救世主」はだいぶ地味かもしれません。
「救世主」は「砂の惑星」でポールが勝利をおさめてから12年後の話。当初のポールの思惑を離れ、宇宙では聖戦が荒れ狂い多くの人が死に、宇宙ギルドやベネ・ゲセリットなどの旧勢力はポールを倒すべく謀り、フレーメンの中にも叛逆の兆しが。
地味なんですけど、この「救世主」にこそ前期デューンの真髄があるんじゃないかという気がします。
ポールはクイサッツ・ハデラックになり未来が見えるようになったのですが、それはいいこととはとても言えなくて、ポールはむしろ苦しむことになります。
いくつか見える未来の道のうち、これ以上ジハードが宇宙に広がらないようにするためには、アトレイデス家に災いがないようにするためには、人類にマシな未来を用意するためには、細く辛い道を辿るしかないことがわかっているからです。
旧約版を読んでいて結末は知っていましたから、この新訳版を読む経験は、まるで既に知っている避けられない未来へ向かって行くポールと同じ経験をしているかのようでした。
人類のために苦しい道を選ぶというのは、キリストの磔刑を想起させますね。
これはネタバレ的になってしまうのですみませんが、辛い道を辿ることになったポール・アトレイデスではあるものの、最後はポールの尊厳は侵されず、役目を無事に果たすことができて、ハッピーエンドとも言えるのではないかと思います。
お疲れさま、ポール、ゆっくり休んで。