ぱらりーそーしー日記

タイトルに特に意味はありません。子どもの造語がかわいかったので、タイトルに使いました。本、子育て、映画、旅行等。たまにしか投稿しませんが…

イスタンブルへ向かう その2

(承前)

paraly-sorcy-diary.hatenablog.com

残念ながら大使館にも手紙は来ていなかった。他にすることもなし、11月19日付けの古い日本語の新聞を読んでいると、ショッキングなニュースに出くわした。淀川長治さんが亡くなったのだ。テレビでは当たり障りのないことばかり言っていると思われるかもしれないけど、この人の本を読んでいると、映画を観る眼の確かさに感心する。それにこれほど映画を語れる人もいない。なんせチャップリンだのワイダだの、映画の歴史に名を刻んだ人達と実際に会って話をしているのだ。人柄もよさそうで、語り口もよかったし、惜しい人を亡くした。このニュースを読んだときは思わず「えっ」と声をもらしてしまった。

後は前回アンカラへ来たときの繰り返しだ。HOTEL SIPAHIのロビーで1時間ほどテレビを見て過ごし、ごはんを食べに出て、またホテルでテレビを見ながら日記を書く。周りのトルコ人のおじさん達は暴動のニュースを見て怒って舌を鳴らしたりしている。そしてまたもや隣に座った人がチャイをおごってくれたりする。こういう瞬間のトルコ人のちょっと気恥ずかし気でもある親切の表し方は好きだ。

そして宿を後にし、駅へ向かった。アナドル・エキスプレスは21:40頃に駅に入って来た。見かけも内装もアンカラ・エキスプレス(隣のホームに停車していた)よりは少し落ちるようだけど、それでもコンパートメント寝台とはなかなかリッチな気分になれるものだ。1コンパートメントを2人で使うようになっている。室内には洗面台もついている。

そのうち、日本人のおばさん達のツアー団体がやって来た。うち1人がオーバー・ブッキングになっていた、私の部屋と。彼女達のトルコ人ガイド「トオルちゃん」(渡辺徹に本当に似てる)が処理してくれている間、そのおばさんと話すと、九州の人達のようだ。気のいい人でよかった。

リッチな気分はいいけど、この列車はかなり揺れる。こうして日記を書いているけど、一苦労だ。余談だけど、この列車のトイレは「旧国鉄の悪夢」ってやつだった。つまりタレ流しだ。恐れ入った。そうこうしている間にも列車はアンカラの街を抜け、イスタンブルを目指し、トルコの大地を大いに揺れながら駆け抜けていく。

 

1998年12月のある日