例えばヨーヨー・マはバッハの無伴奏チェロ組曲を何度か録音していますし、グレン・グールドは同じくバッハのゴールドベルク変奏曲を何度か録音しています。彼らにとってその曲は、汲めども尽きぬ泉という感じなのでしょうか。
ますむらひろし氏が宮沢賢治「銀河鉄道の夜」を何度もマンガで描いているのも、もしかしたら同じことなのかもしれません。
ますむら版「銀河鉄道の夜」で私が最初に読んだのは、こちら。(手元に写真がないもので…)
小学生の時に父が買って来たものです。「幻想四次元」でしたかそういう不思議な世界を感じさせる装丁、紙質などが好きでした。今でも大事に持っています。
それから、これも持っているように思います。出ると気になって買っちゃいまして。
同じ本を何度も買うなんて…と思われるかもしれませんし、自分でもいくらかはそう思いますが、演奏が録音時期によって違うように、ますむら版銀河鉄道の夜もまた違うんですよ。
そして、先日はこれを買いました。こちらもきれいな装丁ですね。中にもカラーページが結構あります。
あらためて読んでみると、あらためてすごい作品だなと思いました。詩的な美しい言葉、言葉にしきれない心の動き・あり様を感じさせる表現、濃い死の気配がある一方で希望も感じさせたり。
また、ますむらひろし氏の絵が原作の魅力をさらに引き出してくれているとも思いました。実は原作より先にますむら版銀河鉄道の夜を読んだり、りんたろう監督の映画「銀河鉄道の夜」を見たりしたので、もうすっかり宮沢賢治とますむらひろしは分かち難くなってるところがありはするんですけど。
「銀河鉄道の夜」といえば、「銀河鉄道の父」もとてもよかったです。
主人公は宮沢賢治ではなくて、宮沢賢治の父親です。子どもがまだ小さい時に読んだのですが、父親とはこういうものかと心に刺さりました。自分はこの小説の宮沢政次郎(宮沢賢治の父)みたいになれるだろうか、と。