さてさて、ウンイエに行く予定だったのだけど、目覚めてみれば、もうトラブゾンだった… カラヴュックでトラブゾン行きのバスに乗るとき、Ulusoy(バス会社)の人がトラブゾンへ行くと勘違いしたようで、起こしてもらえなかった。
出発地のサフランボルは、上の地図ではちょっと左に切れているかもしれないけど、カラビュクという町の近くにある。
サフランボルからトラブゾンまで、バスで約9時間くらいかかっただろうか。
シャトルバスで街の中心に着き、ホテルを探す。この辺り(メイダン公園付近)で探したように思う。
1軒目では、子どもが店番をしていた。言葉をお互いに理解できないのはしょうがないにしても、もう少しくらい理解しようという態度を示したっていいだろう、という感じの対応で、泊まれず。
次のホテルは部屋がないと言われた。全然そんなことなさそうだったけど。と言うのは、この辺は売春宿が多いらしいのだ。後刻、ブラインドを下ろしたホテルのロビーに客を待つ売春婦がいるのを見ることがあった。ここも売春宿だったのかもしれない。
結局、3軒目のホテルに決めた。シングルで170万TLだ。5万しかまけてもらえなかった。
このホテルの主人、顔は恐いけど悪い人ではなさそうだ。でも、部屋はひどかった。部屋を入ると奥行き30cm×幅3mくらいのスペースがあり、その奥はもうベッドだ。ドアを開けた先にテーブルがあり、ドアは完全には開かない。安い部屋をと言ったのはこちらだから、しょうがないんだけど。
他の人を見ていると、部屋にいるのは寝る時、着替える時など限られた時だけで、もっぱらロビーで過ごすものなのかもしれない。
街に出る。雨だ。たちまち靴も靴下もぐっしょり濡れる。おまけにサフランボルからの落差が大きいのか、街を歩いていても都市に埋没した一人という感じ。あるいは、不愉快になるようなチラッと見る視線を浴びるだけだ。そして、することがなくてホテルへ戻れば、あの部屋だし。
明日、スメラ僧院へ行ったら、とっととこの街を去ろう。村上春樹も沢木耕太郎もこの街について書いていたが、本当にそれに値するのだろうかという気持ちになって来た。
だけど、そんな気分も、黒海を眺めていると少しは和らぐ。たとえ雨が降り、風が強く、冬の日本海を思わせる暗い雰囲気だったとしても。
もう一つ、心を和らげてくれたのは、偶然同じ宿に泊まっていた日本人バックパッカーの存在だ。同じくすることもなく部屋で寝ていた彼らと、だべって過ごした。
この宿には、5人の同年輩の男性と1人の女性が泊まっていた。みんなアジアから陸づたいにトルコまでやってきた猛者ばかりだ。
夜は彼らと一緒に食事に出た。魚料理を出す店だ。久しぶりに魚を口にする彼らは喜んでいた。自分は久々に口にするわけではなかったけど、それでもレモンと醤油(女性が持っていた)と魚の味はうれしい。Su(水)をくれと言ったら、トイレの水道から汲んで出された時はちょっと参ったが。
帰りにみんなで黒海を見に行く。うら寂しいところに夜一人で行くのはためらわれるけど、数の強みだ。水平線から30°ほど上がった横倒しのオリオン座がきれいだった。
その後、たまたま開いていた果物屋でみかんを買って帰る。
夜はそのミカンを食べながら、大富豪大会だ。みんなもともとそうなのか、長旅がそうさせるのか、とても明るく気持ちのいい人達だった。
明日は彼らと一緒にスメラ僧院へ行くことにする。
1998年11月のある日