ぱらりーそーしー日記

タイトルに特に意味はありません。子どもの造語がかわいかったので、タイトルに使いました。本、子育て、映画、旅行等。たまにしか投稿しませんが…

2023年2月に読んでよかった本

前回に続いて、今度は2月に読んでよかった本をご紹介します。

 

帝国テイクスカラアンの辺境にある独立したステーション「ルスエル」は、ある時、帝国から新任の大使の派遣を要請される。新任の大使マヒートが帝国の首都(主星)に着くと、どうやら前任大使は暗殺されたらしい。ルスエルにはあり帝国にはない技術を巡って、皇帝が高齢であることもあり、マヒートは帝国の宮廷陰謀劇に巻き込まれて行く。

と書くと、まあ、よくあるスペース・オペラ系のSFかなと思うところですが、この作品は趣が異なります。航宙艦同士の派手なドンパチとかもありませんし、マヒートが銃を手に超人的な活躍をするわけでもありません。ル・カレ作品などのスパイものの方が雰囲気は近いかも。

帝国なんて飽きるほど出て来ているかもしれませんが、この帝国は独特でおもしろかったです。詩が重視される社会で、公的な発言には詩が必ず絡んで来ますし、暗号にも詩が使われます。装飾とか帝国人の描写からは、南米の古い帝国とヨーロッパの帝国が混じったような感じも受けました。

マヒートと帝国側案内人スリー・シーグラス(帝国の人名も独特)のバディもの(百合の雰囲気もあり?)、マヒートと脳内の前任大使とのバディものでもあります。
「脳内の大使」って何だよ、ですが、ルスエルでは貴重な体験や知識が失われないように、人の記憶は他の人に引き継がれるのです。
そして、その技術が高齢の皇帝や皇位継承を狙う人を引きつけてしまうわけです。

ラストがよかったですね。おもしろい作品が、一気に、おもしろくてかつ深みのある作品になったと思います。

 

最初はこれはSFだとは思えませんでした。いろんな人が次々に出て来て、それぞれの人の人生が描写されて行きます。
これは本当にSFなのかと思いながら読んで行くと、どうやらどの登場人物も、ある同じ飛行機に乗り合わせていたことがわかって来ます。それがわかって来た中盤からSFになって行きます。
終盤は今時の小説のようにハリウッド映画的に目まぐるしく進むわけではありませんが(それは別にSFの要件でもないですけどね)、登場人物達には(全員ではないですけど)自分の人生を見直して救われる人もあったり、味わいある終わり方をします。